@@ -29,7 +29,30 @@ namespace std {
2929
3030このコンセプトを構成する4つの制約式は全て、[等しさを保持](/reference/concepts.md)することを要求しない。
3131
32- `const_cast`を用いる制約式は、右辺値に対しても代入できるが`const`な右辺値では代入できなくなる非プロキシイテレータの*prvalue*（例えば`std::string`そのものなど）を返すイテレータを弾くためにある。これによって、間接参照が*prvalue*を返すようなイテレータ型は`indirectly_writable`のモデルとならないが、出力可能なプロキシオブジェクトを返すイテレータは`indirectly_writable`のモデルとなる事ができる。
32+ ### 制約式について
33+
34+ `const_cast`を用いる制約式は、非プロキシオブジェクト（値を所有するオブジェクトのことである。[`std::string`](/reference/string/basic_string.md)などが該当）を弾くために存在する。
35+
36+ まず前提として、非プロキシオブジェクトは[メンバ関数の左辺値／右辺値修飾](https://cpprefjp.github.io/lang/cpp11/ref_qualifier_for_this.html)が追加される以前からの慣習により、*pvalue*であっても代入が可能である。また、値を所有するために`const`が付与されれば代入は不可能となる。
37+
38+ ```cpp example
39+ #include <string>
40+
41+ int main()
42+ {
43+ std::string() = "string"; // pvalueに代入
44+ }
45+ ```
46+
47+ このような非プロキシオブジェクトの* pvalue* がイテレータの間接参照結果として返された場合、それに書き込んだとしても、その* pvalue* のオブジェクトが所有する値を書き換えるのみであり、正しく出力されるとは言えない。
48+
49+ 一方で、プロキシオブジェクト（所有権を持たず、他のオブジェクトを参照するオブジェクト）がイテレータの間接参照結果として返された場合は、* pvalue* の場合も代入された値を「参照する先のオブジェクトが所有する値」へ書き込むことによって、正しく出力を完了することが出来る。
50+
51+ 更に、プロキシオブジェクトは値を所有しないため「` const ` な参照先」でなければ、プロキシオブジェクトそれ自体が` const ` であっても代入は可能であるべきである。しかしながら、従来のプロキシオブジェクトは` const ` を付与された場合代入が不可能になる実装が殆どであり、変更が必要である。例としては[ ` std::vector<bool>::reference ` ] ( /reference/vector/vector.md ) がある。
52+
53+ プロキシオブジェクトの他にも、参照（右辺値参照/左辺値参照問わず）も正しく出力が可能である。このことから、「` const ` を付与した上でも代入が可能であるようなプロキシオブジェクト」と「参照」を合わせて「プロキシ参照（proxy reference）」と呼称することがある。
54+
55+ 以上のことから、` const ` を付与した際にも代入が可能であればプロキシ参照、不可能であれば非プロキシ参照と区別することが可能となる。したがって、間接参照が非プロキシ参照（プロキシオブジェクトでない* pvalue* など）を返すイテレータ型は本コンセプトのモデルとならず、プロキシ参照を返すイテレータは本コンセプトのモデルとなる事ができる。
3356
3457## モデル
3558
@@ -51,6 +74,8 @@ indirectly_readable<Out> && same_as<iter_value_t<Out>, decay_t<T>>
5174` indirectly_writable ` のモデルとなる` Out ` の` operator* ` は出力（上記式による代入文の左辺に来ること）だけが唯一有効な使用法であり、[ ` indirectly_readable ` ] ( indirectly_readable.md ) である必要はない。
5275
5376## 例
77+
78+ ### C++20
5479``` cpp example
5580#include < iostream>
5681#include < concepts>
@@ -96,7 +121,7 @@ int main() {
96121```
97122* std::indirectly_writable[color ff0000]
98123
99- ### 出力
124+ #### 出力
100125```
101126int* is indirectly writable int
102127std::unique_ptr<int > is indirectly writable int&
@@ -109,6 +134,60 @@ std::optional<int> is not indirectly writable int
109134not_writable is not indirectly writable int
110135```
111136
137+
138+ ### C++23 で満たすようになった型
139+ ```cpp example
140+ #include <iostream>
141+ #include <concepts>
142+ #include <iterator>
143+ #include <utility>
144+ #include <tuple>
145+ #include <vector>
146+
147+ template <typename Out, typename T>
148+ requires std::indirectly_writable<Out, T>
149+ void f(const char* out, const char* t)
150+ {
151+ std::cout << out << " is indirectly writable " << t << std::endl;
152+ }
153+
154+ template <typename Out, typename T>
155+ void f(const char* out, const char* t)
156+ {
157+ std::cout << out << " is not indirectly writable " << t << std::endl;
158+ }
159+
160+ struct ret_proxy_pair
161+ {
162+ // 全ての要素がプロキシ参照である pair はプロキシ参照
163+ std::pair<int&, std::pair<int&, int&>> operator*();
164+ };
165+
166+ struct ret_proxy_tuple
167+ {
168+ // 全ての要素がプロキシ参照である tuple はプロキシ参照
169+ std::tuple<int&, std::tuple<int&>> operator*();
170+ };
171+
172+
173+ int main()
174+ {
175+ f<std::vector<bool>::iterator, bool>("std::vector<bool>::iterator", "bool");
176+ f<ret_proxy_pair, std::pair<int, std::pair<int, int>>>("ret_proxy_pair", "std::pair<int, std::pair<int, int>>");
177+ f<ret_proxy_tuple, std::tuple<int, std::tuple<int>>>("ret_proxy_tuple", "std::tuple<int, std::tuple<int>>");
178+ }
179+ ```
180+ * std::indirectly_writable[ color ff0000]
181+
182+ #### 出力
183+ ```
184+ std::vector<bool>::iterator is indirectly writable bool
185+ ret_proxy_pair is indirectly writable std::pair<int, std::pair<int, int>>
186+ ret_proxy_tuple is indirectly writable std::tuple<int, std::tuple<int>>
187+
188+ ```
189+
190+
112191## バージョン
113192### 言語
114193- C++20
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