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発酵とDIY

1. はじめに

近年、発酵文化があらためて見直されています。自分たちで発酵食品をつくり、またそのための道具をつくることを通じて、発酵とは何か考えていきたいと思います。

近年、発酵文化があらためて見直されてきており、家庭での発酵食品づくりへの関心も高まっています。前回、vol.1のテーマは「パンと酵母」でしたが、酵母は味噌、醤油、お酒づくりなどの発酵食品でも活躍しています。また、これらの食品をつくる発酵プロセスには「乳酸菌」や「麹菌」もおおきく関わっています。

今回のバイオ・リサーチでは、書籍『発酵の技法―世界の発酵食品と発酵文化の探求(2016年4月発行)』を参考にしながら、「発酵とDIY」について考えていきます。この書籍の中では、発酵にかかわる概念や、いろいろな食材を発酵させる方法に加えて、自分たちで発酵食品をつくるときに役立つ道具に関しても紹介されています。

発酵食品づくりに用いる道具として、例えば、発酵微生物にとって好ましい温度に保つための「保温器(インキュベータ)」が挙げられます。この保温器ひとつとっても、これまで様々な工夫がなされてきました。また、その他の機材に関しても、日々世界中で試作が行なわれており、その作り方はインターネットで広く公開されています。

2. 方法「発酵巡礼」

今回、山口市内で発酵食品をつくっている方々に、発酵食品づくりに関するノウハウを伺い、サンプルをお借りするところからリサーチをはじめました。

a) 観察編

山口市内を中心に、発酵食品をつくっている飲食店や個人、日本酒の酒蔵などを訪問して情報収集、サンプル採集を行います。

加えて、実際に自分たちで野菜の発酵食品(ザワークラウト、キムチ)をつくってみながら、その中にどんな微生物が生息しているのかを調べます。

  1. 酸・アルカリの度合いが乳酸菌などの微生物の生息環境を左右するためpHの値を測定します。
  2. 乳酸菌用の培地(MRS培地)をつかって、シャーレの中で培養してコロニー(集落)を観察します。
  3. 顕微鏡で撮影します。今回は、カールツァイス社、山口県産業技術センターに顕微鏡をお借りして、撮影に挑みます。
b) 道具編

発酵食品づくりを成功させる鍵は、温度管理です。発酵食品の中には、あたたかい温度に保つ保温器(インキュベータ)を必要とするものもあります。冷蔵庫ほど身近ではない、この保温器ですが、身近に手に入る材料でつくることができます。今回は、書籍『発酵の技法』を参考に、保温器をいくつかの方法で試作します。

3. 結果「菌との遭遇」

目でみたり、香りをかぐといった観察の他に、顕微鏡やDNA解析を使って、発酵食品の中に実際に生息している微生物を調べることができます。今回、いくつかのサンプルから発酵微生物と思われる微生物を見つけることができました。

a) 観察編

ヨーグルト、マッコリ、味噌、果実ジュース、漬物など、いくつかの発酵食品の中から、生息している菌を確認することができました。また、ザワークラウトやキムチの発酵のプロセスを記録におさめました。ザワークラウトについては、仕込みから5日間にわたって定点観測を行い、その様子を撮影しました。水質計でpHを測定した結果、徐々に数値が下がり、酸性が強くなっていくことが確認できました。また、顕微鏡で約400倍の倍率で観察したところ、乳酸菌や酵母らしき微生物がいることを確認しました。キムチも同様にpHが徐々に下がり(酸性が強くなり)、顕微鏡で乳酸菌らしき微生物がいることを確認しました。

b) 道具編

保温器(インキュベータ)を以下の材料を使って4種類試作しました。

  1. 携帯用カイロ、発泡スチロールの箱
  2. 電気毛布、ブランケット、温度計
  3. 温度調節機能付きの水槽用ヒーター、調理用バット、深めのプラスチック容器
  4. 白熱電球、温度センサ、電子工作基盤キット、電子レンジ(断熱箱)

4. 考察

バイオ・リサーチの視点を取り入れて、発酵を担う微生物のことをよく理解すること、またその微生物にとって良い環境を用意することで、あなたの家庭での発酵食品づくりもより楽しくなるかもしれません。

書籍『発酵の技法』の冒頭には、こうも書かれています。「…発酵は自然現象であり、料理での利用はそのごく一部であることを認識することは重要だ。我々の身体の細胞も、発酵を行っている。…発酵が我々人類を作り出した、というほうが正確だろう。」私たちの「発酵」のリサーチはまだ始まったばかりです。ぜひ、みなさんの「発酵」話を聞かせてください。

次回、vol.3のテーマは「森のDNA」です。山口の森のなかには、一体どんな植物や昆虫が住んでいるのでしょうか。森の図鑑をつくりながら、いろいろな視点から森の豊かさを確かめてみましょう。